余は「報道STATION」君の非を諭す
テレビ朝日系「報道STATION」で「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」でホメオパシーが肯定的に扱われたという話が話題になった。一般人向けとして「ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful」を書いた者としては、何かエントリをあげようと思いつつも完全に乗り遅れた。
早速、参考文献としてとても役立つ「ホメオパシー - Skeptic's Wiki」の方も更新されているので、詳しい話はそちらも参照のこと。
サトルエネルギー学会
番組に出ていた帯津良一氏は、サトルエネルギー学会の会長。学会の挨拶を読むとわかるように*1、この学会は「根拠はないけど効くんだよ(あるんだよ)」というものを扱う学会です。簡単に言えば、スピリチュアルとかニューサイエンスとか、ニューエイジムーブメントとか、そういうのを扱っているところです。
学会誌には、サイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄氏*2とか、『水からの伝言』の江本勝氏、マイナスイオン三大権威の山野井昇氏、外気功の研究で知られる山本幹男氏、「サムシング・グレート」の村上和雄氏などなどなどなど…様々な人が寄稿しています。ここら辺から雰囲気を感じていただければ。
番組での説明ポイント
(引用注:ホメオパシーの)科学的な理論は実証されていないが、効果が認められており、世界的に普及している。
ポイントは、ホメオパシーについて「きちんとした根拠はないが効果はあるのだ」「世界的に普及している」というように視聴者に伝えたことでしょう。
「ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful」の「Q3. 別に科学的根拠がなくても治ればいいのでは?」でも書きましたが、ホメオパシーの効果は確認されていません。また、「きちんとした根拠はない」というのも間違いです。通常の科学の手続きで言えば「ホメオパシーに効果が認められないことは何度も確認されている」のです。言い方を変えれば「現時点で効かないとする根拠は十分ある」と言える状態です。
「世界的に普及している」というのはその通りです。但し、「Q1. 海外では保険の対象になっているというし、国がホメオパシーの効果を認めているのでは?」で書いたとおり、効果が認められているわけではありません。「現時点で効かないとする根拠は十分ある」と言える状態なのですから順当ですね。
結果は卑劣
結果として、「がん難民」という難しく悩ましい問題の解消法のひとつとして嘘の情報を提示したというのが、「報道STATION」の行ったことです。「報道STATION」により「がん難民」に問題意識をもった視聴者の善意はもてあそばれていないでしょうか?「報道STATION」は、その意味を良く考えなければいけない。
追記(2009-01-27)
以下のページで「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」の動画を見ることができます。是非、その目でどういう「報道」だったのかを確認していただきたいと思います。
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/contents/movie/090122/index.html