科学はイデオロギーと不可分か

「科学がイデオロギーに左右されるという主張があるけど、蒲田の見解はどう?」という質問を受けたので、ここで僕の考えを書いてみる。僕はこの分野について専門的な勉強をしていないし、長く科学に関する議論に関わってきた中で得た、断片的な知識*1からの…

非合理な主張を信じている人は愚かなのか

ずらずらと長い文章を書いているが、僕がタイトルの件について出してる結論は「愚かではない」である。 僕はしばしば公に非合理批判活動をしている。過去には信奉者との議論も多くやってきた。だから、なぜ非合理を信じるのか?というトピックに関してもそれ…

電磁波過敏症や化学物質過敏症について

twitterの短文ではうまく説明できないと思ったのでブログに上げます。ここでは、電磁波過敏症や多種類化学物質過敏症についての私の考えを書きます。 ごく弱い電磁波(ごく微量の化学物質)に過敏に反応して体調不良に陥るとされている「電磁波過敏症(多種…

僕らは病院やカゼのことを意外にわかってない

酒井健司著『医心電信 よりよい医師患者関係のために』を読んだ。朝日新聞デジタル「アピタル」で連載している同名のコラムを書籍化したものである。 僕らは意外にカゼのような一般的な病気のこともわかっていないし、病院との関わりかたもわかっていないっ…

党派性を主張することは有意義なのか?

僕は「左」ですがねえ https://t.co/paWAGdB8ea — 菊池誠(ライブのオファーお待ちしてます) (@kikumaco) 2017年7月27日 ということで菊池さんが、自分の立ち位置として「左」を明言しているのがきっかけで思ったことなのですが、右とか左とかの党派性を主張…

血液型性格判断FAQ -終わりに-

血液型性格判断の研究結果は「血液型と性格の間に相関はないと決着済み」から「相関があるとはいえない(わからない)」までの幅があるものの、相関があるという結果は出ていません。 それでも血液型性格判断が正しいと信じるのは自由でしょう。しかし「実際…

血液型性格判断FAQ -3-

血液型性格判断FAQの3回目です。 以前のエントリはこちら。 血液型性格判断FAQ -1- - 僕と懐疑の関係 血液型性格判断FAQ -2- - 僕と懐疑の関係 今回は、主に血液型性格判断を否定する側の疑問に答えます。 Q. 人間の性格は複雑なのに、A,B,O,ABの4つに分類…

血液型性格判断FAQ -2-

血液型性格判断FAQの2回目です。 1回目はこちらです。「血液型性格判断FAQ -1- - 僕と懐疑の関係」 Q. 統計的に有意な差があるのならば、性格判断は正しいのでは? 前の項目で示したように、ランダムなデータであっても「差異」は生じてしまうことが分かりま…

血液型性格判断FAQ -1-

血液型性格判断とは何? 血液型性格判断とは、ABO型の血液型から人の性格を分類でき、その分類が妥当であるという主張のことです。通常は心理学的な分類というよりも「A型は几帳面、O型は大雑把」などのような、単純なステレオタイプとしての分類のことを指…

超心理学に関する僕の意見

結論から言おう。僕の現状の意見としては「超心理学の中で研究されている超能力(ESPやPK)は存在しないだろう」というものである。 現在まで超心理学の研究結果から得られている結論は「超能力は存在する可能性がある。しかし、それは検出が非常に難しいほ…

『未確認動物UMAを科学する』は、確かにUMAを科学している

なかなかボリュームたっぷりのUMA(Unidentified Mysterious Animal)本が翻訳された。『未確認動物UMAを科学する―モンスターはなぜ目撃され続けるのか』である。 日本ではUMAが一般的な呼称だが、海外ではCryptozoology(未確認動物学*1)と呼ぶのが…

音読カードの押印は手書きで

妖怪ウォッチの人気のおかげで息子の宿題が捗る!という話が話題になってました。妖怪ウォッチがすごいのは確かにですが、音読カードに手書きというパワーを感じるところです。 妖怪ウォッチがすごい - トウフ系 こういうのって、絵を描く力がある人はちゃち…

日本のオカルト事情「ホメオパシー」(2010年9月版)

(これは2010年 イタリアの懐疑論者団体CICAPの機関誌に載せるために書いた文章です。イタリア語に翻訳されて載る予定でしたが、流れてしまいました。若干古くなってしまいましたが、お蔵入りさせるのももったいないので公開します。) 1. はじめに はじめに…

ふつうのひとだからこそできること

(ずいぶん前に書いたまま放置されていた文章があったので、思い切って公開。) 「聡明な人がスマートに問題を解決していくってのばっかりじゃ、普通の人に訴えかける力は弱いんじゃないか。ごく普通の人が普通の人なりに問題を解決していく姿が必要じゃない…

『謎解き超科学』でニセ科学に騙されないための足場をつくろう

彩図社より『謎解き超科学』が発売されました。詳細な目次と担当者はASIOS公式ブログの該当記事をご覧ください。 内容はASIOS既刊「謎解き」シリーズと同じく「伝説」と「真相」パートで構成されています。ASIOS名義ですが、外部から菊池聡さん(オカルトニ…

ニヒリストにならないための懐疑論(後編)

この文章は2007年に超常現象同人誌『Spファイル5』に寄稿した文章です。3回に分けて投稿します*1。 第1回:ニヒリストにならないための懐疑論(前編) - Skepticism is beautiful 第2回:ニヒリストにならないための懐疑論(中編) - Skepticism is be…

ニヒリストにならないための懐疑論(中編)

この文章は2007年に超常現象同人誌『Spファイル5』に寄稿した文章です。3回に分けて投稿します*1。 第1回:ニヒリストにならないための懐疑論(前編) - Skepticism is beautiful 第2回:今回 第3回:ニヒリストにならないための懐疑論(後編) - Ske…

ニヒリストにならないための懐疑論(前編)

この文章は2007年に超常現象同人誌『Spファイル5』に寄稿した文章です。3回に分けて投稿します*1。 第1回:今回 第2回:ニヒリストにならないための懐疑論(中編) - Skepticism is beautiful 第3回:ニヒリストにならないための懐疑論(後編) - Ske…

シャープのプラズマクラスター掃除機について

まず最初に確認しておきたいのは高濃度の『プラズマクラスター』が、「浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去」できるというのは、根拠のある話らしいということです*1。そういった前提を置いた上でも、件の掃除機の広告には問題があるという、消費者庁の…

『検証 予言はどこまで当たるのか』震災への言及もあるよ

『検証 予言はどこまで当たるのか』は、文芸社から出版されたASIOS新刊です。発売日は10/3。古今東西の予言を検証するという内容の本です。安定のASIOS本なので基本は分かりやすく【伝説】パートと【真相】パートを持つ構成となっています。震災関係のデマや…

アラフォーオヤジは目標を達成できたのか?

事のあらまし 話の始まりは昨年9月、幼稚園の運動会で短距離走をやることになり走ったのでした(保護者ががんばる競技の多い幼稚園なのです)。スタートしてみると全てがちぐはぐな感じで前に進みません。周りは20代の親も多い中、運動不足のアラフォーオヤ…

僕たちはなぜ水伝なんかに悩まされるのか

水もごはんも桃も梨も答えを知っているとか 最近、TwitterやFacebookで、僕らにとっては懐かしい「ありがとう」「バカヤロウ」実験が話題になっているそうです*1。詳しくはこちらのエントリなどを参照のこと→『桃は答えを知っている - 男の魂に火をつけろ!…

トンデモさんは自分に当てはまる言葉で他人を批判する

スキーマ 認知心理学では、物事を理解するために利用される知識の枠組みのことをスキーマ(schema)と呼ぶ。人は様々な経験の中で様々なスキーマを形成する。そして、話題によってさまざまなスキーマを切り替えてもいる。特に難しい話ではなく、誰もが無意識…

「奇跡」のジレンマ

日常用語で出てくる「卓越した結果」という意味ではなく、本来の意味の「奇跡*1」は、それ自体がジレンマを抱えているという話。僕はこのことを「奇跡のジレンマ」と呼びたい。 超常現象と認められるためには 僕は、超常現象の調査なんかをやったりすること…

『最強のクリティカルシンキング・マップ』

著者の道田泰司様より最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけようを献本いただきました。ありがとうございます。 道田さんとの出会い 僕は懐疑論者を自称しているわけなので、懐疑的思考とか科学的懐疑主義とかそういったことを…

『検証 大震災の予言・陰謀論』

文芸社の高橋様より『検証 大震災の予言・陰謀論』を献本頂きました。ありがとうございます。 本書は「超常現象の謎解きシリーズ」など、超常現象の懐疑的調査が得意なASIOSメンバーと、大震災以降、国際ニュースを追い続けてきたアンドリュー・ウォールナー…

『もうダマされないための「科学」講義』にダマされるな

著者の一人である片瀬さんから献本頂きました*1。ありがとうございます。目次は以下。 『もうダマされないための「科学」講義』1章 科学と科学ではないもの 菊池誠 2章 科学の拡大と科学哲学の使い道 伊勢田哲治 3章 報道はどのように科学をゆがめるのか 松…

信奉者の説得についての経験談と思うこと

何度か語っていることではあるけれど、僕は超常現象信奉者として、後には超常現象懐疑論者として掲示板上での議論を続けていた。話題は超常現象だけにはとどまらず、俗にいう「ニセ科学」の議論になったことも沢山ある。 そういった歴史の中で、信奉者に説得…

『アメリカ陰謀論の真相』はアメリカ政府の陰謀か

文芸社の高橋様より献本頂きました。ありがとうございます。本書は、あの『陰謀論の罠 』の奥菜秀次さんが再び陰謀論を取り上げて種明かしを行った本である。内容は陰謀論マニア奥菜クオリティである。 『アメリカ陰謀論の真相』目次は以下に まえがき アメ…

批判者に意識してもらいたい3つのこと

ぼくは元超常現象信奉者で、信奉者としての議論経験も少なくない。そんな経験から、信奉者と議論する場合に、批判者として気を付けたいポイントをあげてみる。相手が純真な信奉者の場合は特に気を付けてほしいところ*1。 1. 信奉者をユニークな一人の人とし…