とある夫婦の軋轢と誤帰属の働き
「とある夫婦の離婚序章」という増田を読んだ。
元増田が共働きということで、共働きの話が多いので、あえて専業主婦と二人の子供(3歳前&新生児)を持つ父親としての意見も書いてみよう。
まず、たとえ専業主婦であっても、二人の子供を放置せずに相手をしながら生活をするのは、やったことのない者の想像を絶する大変さであるということは確認しておきたい。少なくとも私の想像力では、ストレスを溜めずにこんなことをこなすことができる人間は「特殊」な人間だとしか言いようがない。
例えば、下の子供ができたことで、愛情を独り占めできなくなった上の子がストレスを溜めて攻撃的になっている。下の子はまだ首もすわらず縦抱きもできない状態。さて、この状態でどうやってトイレに行こうか。家事をしようか。下の子の授乳をするときはどうする。
相当ブラックな会社でない限り、会社に行っていた方が楽だろう。私はそう思う。兼業主婦の方が大変*1と言い切れるだろうか。
ちなみに、私の平均的な家事負担は以下のような感じである。食事は大部分を仕事もちの母がやってくれているため、私や妻の負担は殆どない*2。最近は妻に慣れが出てきたのか、私の家事負担率が減る方向に変化中なので、少し前の安定した状態でリスト。平日休日は関係ない。会社はちょっとぐらいの無理で済むなら定時で帰ることにしている。
- 平日
- 上の子供の着替え
- 上の子供の歯磨き(朝と夜)
- 上の子供の食事の世話(朝)(夜は50%ぐらい)
- 洗濯もの干しと畳み(親の分は2日に一度、子供の分は毎日)
- 上の子の風呂入れ
- 上の子供と遊ぶ(寝るまでの空き時間は全て)
- 下の子に夜中のミルクやり手伝い(1回:混合なので手伝いしかできない)
- 休日(平日の内容に加えて)
- 掃除(上の子供をかまいながらのときも)
- 子供を連れて買い物(又は妻の買い物中に二人の子供を見る)
自分で言うのもなんだが、家事・育児を手伝う夫としては良くやっている方なのではないかと思う。妻の家事負担はそれなりに低く抑えられているはずだ。しかし、妻に当たられることは普通にあることだ。なぜか。それは家事負担率なんか、妻のストレスの原因の些細なひとつでしかないからだ。
アルファ主婦*3のid:pollyannaさんのエントリ「ぽりあんてな」でこんなことが書かれている。これは重要だ。
匿名氏が勝手に考えて決めた「協力」を一方的に奥さんに与えて、「これだけ自分は頑張っているんだから、文句を言わず、笑顔で応援しろ」、というのは、やはりちょっとひどいと言わざるを得ない。
でも、奥さんも、ほんとうに自分がやってほしいことを、正確に匿名氏に伝えなければいけない。
1日も休まず24時間子供に縛られる。もちろん縛られるだけではなくてその責任も抱える。そういった目に見えない負担こそがストレスの最も大きい原因だと思われる。妻の口から出てくるこまごまとした不満は本質的な問題じゃない。だから、育児においては「手伝う」という意識ではダメだ。必要な意識は「共にやる」であって、それが妻に伝わることが必要なんだと思う。そうして始めて妻は365日24時間フルタイム稼動&待機という精神状態から開放される。
ちなみに、妻*4の問題は心理学的に言えば「誤帰属」の問題と言えるんじゃないだろうか。人は不満を感じたとき、その源泉を探す。理由を意識するより先に不満の感情があるというのが重要。感情の原因の推定を誤ることが、ここで言う誤帰属だ。人は不満の感情を吐き出すとき、そこに合理的な理由がないと後ろめたく感じてしまう。そこで、見えやすい理由を後付けして口から出す。これで理不尽な攻撃が完成する。これでは、言う方も言われる方も不幸だ。
なにはともあれ、私も偉そうなことを書いていないで実践だなと反省。
追記(2009-01-16)
誤解している人もいそうなのでちょっと追記。「誤帰属」は誰でも頻繁にしていることです。「人は自分で考えているほど、自分の心の動きを分かっていない」というのは、心理学で「常識」になっています。『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ』なんかが面白いかと思います。
もともとは、ここら辺から常識になっていったらしい→『Telling more than we can know』Richard Nisbett and Timothy DeCamp Wilson in 1977