批判的思考(クリティカル・シンキング)とは何か

はじめに

理性的な人がなぜ信奉者になってしまうのか?という問題については、心理学的なアプローチが色々あります。それはそれで非常に興味深く好きな分野なので触れたいのですが、エントリの流れに従うと、先に別の視点から触れたい内容があります。

ところが、それは批判的思考の限界*1の話でもあります。

批判的思考自体がそんなに当たり前の話題ではないところに、いきなり批判的思考の限界の話などを持ってきても、誤解を生むだけだと思ったので、軽く批判的思考自体に触れておきます。

尚、私は専門家ではないため、厳密な話ではないことを予めご了承ください。

「批判的思考」の定義

さて、まずは定義を見ておくのがいいのかもしれません。といったところで、最初の躓きです。実は「批判的思考」には決定版の定義がありません。

批判的思考の偉い人は以下のような感じで定義していますが、同時に厳密な定義ではなく、ゆるい定義のままにしておくべきみたいなことも言っています。批判的思考は柔軟さを要求するので、定義をガッチリしてしまうと、定義から外れていってしまうということです。

  • Ennis 「何を信じて何を行うかの決断に焦点を置いた、論理的で思慮深い思考」
  • Paul 「ある知識や人間の関心事の領域の中で、技術をもって思考の目的を追い求める、訓練された、論理的、自発的な思考」
  • Smith 「先入観を排し、証拠を集め、仮説を慎重に考慮、評価して結論に達しようとする、論理的かつ合理的な過程 」
  • 道田「批判的な態度によって解発され、創造的思考や領域固有の知識によってサポートされる論理的・合理的な思考」

当たり前ですよね

「良い考え方」といったようなとても抽象的なものを、もっと具体的に表現しようとしたときなら、わりと普通の事しか言っていないと思いませんか?

基本的なところとしては、そのような感じの理解で問題ないと思います。

「そんな事なら普段からやっている」と感じる人もいるかもしれません。それでいいのですが、実践するとなるとテクニック的な要素も入ってくるので、それほど当たり前でもなかったりします。

少なくとも今の学校教育では当たり前ではない

「詰め込み型教育」などと言われるように、現在の教育はどちらかというと、思考よりも知識の獲得を重視していると言われています。これは、批判的思考とは呼べません。

既に批判的思考を知っているひとならば、少なくとも義務教育レベルでは全く教えてもらえなかったことだということが分かると思います。良くて、大学の研究室時代に学んだ人がいるぐらいでしょうか。

欧米では「クリティカル・シンキング(Critical Thinking)」として義務教育レベルから取り入れているところもあるそうです。日本では「問題解決学習」という呼ばれ方をしている教育方針が、クリティカル・シンキングの教育に近いようです。

なにか特別なきっかけがなければ、批判的思考という思考様式を知らなくても全く不思議ではありません*2

但し、誰しも少しは批判的思考能力を持っていますし、完璧な批判的思考能力を持っている人は誰もいません。

批判的思考をするために必要なもの

批判的思考のポイントは、一般的に以下の3つと言われています。

  • 態度

批判的に物事を見ると言う態度がなければ何も始まりません。これは、批判的思考を求められていない場面でも発揮できるか?といった話も含みます。また、オープンマインドでいることも態度のひとつです。

  • 知識

批判的に考える対象の関連領域に対する知識が必要と言われています。もちろん知識は幅広く持っているのが好ましいです。

  • 技術

知識を使いこなす技術です。論理的思考や統計を扱い対象を評価する技術がここにあたります。情報を集めて整理する能力なども含まれるでしょうか。

おわりに

若干、面倒な話になってきましたが、良い結論に至るために、「もっと批判的思考を使おう!」という話には納得していただけるのではないかと思います。

ちなみに批判的思考の対象となるのは、科学のような客観的なものだけではありません。日常生活でも賢く使っていけたらいいですね。

*1:厳密には「弱い批判的思考」の問題点

*2:調査によれば、大学四年生ぐらいでも批判的思考能力は低いという話です