『検証 大震災の予言・陰謀論』

文芸社の高橋様より『検証 大震災の予言・陰謀論』を献本頂きました。ありがとうございます。


本書は「超常現象の謎解きシリーズ」など、超常現象の懐疑的調査が得意なASIOSメンバーと、大震災以降、国際ニュースを追い続けてきたアンドリュー・ウォールナー氏によって書かれた、陰謀論 検証本です。


目次は「ASIOSの書籍紹介ページ」を参照してください。


3.11の東日本大震災以降様々な陰謀論が渦巻いたことは、誰しもが見てきたことだと思います。また、武田邦彦氏のような著名人も、おかしな話をばらまいています。超常現象界隈では予言者が騒ぎ立て、ニセ科学と呼ぶべき主張も色々と表に出てきました。


そんな様々な話を「主張」と「真相」といった形でまとめたのが本書です。ASIOSの書籍らしく、非常に読みやすい本です。また、山本弘さんの地球深部探査船「ちきゅう」インタビュー記事など、陰謀論にさほど興味がなくても面白い話も含まれています。

本書の特徴として、ピックアップされている主張の内容は、科学寄りではなく疑似科学ウォッチャー寄りになっています。ASIOSの得意分野に近いところですから。しかし、なんといっても一番の特徴は、一般向けの和書で類をみない参考文献の多さでしょう。


翻訳ものの一般書は比較的参考文献が載っているものが多いのですが*1、日本の一般書は参考文献リストがないことがお約束にでもなっているかのような惨状です。このおかげで、著者の主張が何を根拠に言っているものなのか、再検証を行いたい場合に非常に苦労するのが常です*2


本書の場合は、そういった心配をする必要は殆どないでしょう。大震災以降、無根拠な主張を根拠に不安を募らせているひと、怒りを覚えているひとが沢山います。中には本書の「真相」が疑わしいと思うひともいるかもしれません。


安心してください。著者らの主張の根拠はちゃんと参考文献としてあげられています。自分で再検証することができます。


『検証 大震災の予言・陰謀論』

*1:それでも、原書から大幅に削られている場合がある

*2:なにかの偶然で発見しない限り、主張の根拠がわからないことも多い

『もうダマされないための「科学」講義』にダマされるな

著者の一人である片瀬さんから献本頂きました*1。ありがとうございます。目次は以下。

『もうダマされないための「科学」講義』

1章 科学と科学ではないもの 菊池誠
2章 科学の拡大と科学哲学の使い道 伊勢田哲治
3章 報道はどのように科学をゆがめるのか 松永和紀
4章 3・11以降の科学技術コミュニケーションの課題  平川秀幸
付録 放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち 片瀬久美子

出版社の紹介にダマされるな

この本、出版社の宣伝を読む限りは、「科学とは何か」を今まであまり意識してこなかった人、「科学」をあまり知らない人(以下「一般人」と表記します)向けの本なのですが、そこにダマされそうになりました。そういった方が読むと、話題についていけないか、曲解しそうな感じの部分が多いでしょう。
そんな優しい本ではないのです。ハードボイルドです。取扱注意です。むしろ伊勢田さんの2章ででてくる「モード1科学*2」を知っている層(以下「専門家」と表記します*3)にこそ有用な内容です。なぜなら「モード1科学」を知った上で「モード1科学」を超えたところの話がメインになっているからです。
「科学」とか「科学哲学」とか、興味を持って本を読んだりしたことのない人にとっては、3章と付録が読みどころになります。

科学を伝えていく側の指針として

菊池さんの章の内容は、今まで科学というものを意識していなかった層でも、是非とも理解してもらいたいことがたくさんでてきます。しかし、短い文章の中ではどうしても説明不足になっています。菊池さんの章に書いてあるようなことは、専門家が、そして私たちが、さまざまな場面で、噛み砕いてていねいに説明していく必要があるでしょう。
そのとき、社会の中に科学をどう位置づけていけばいいか、伊勢田さんの章の内容が役立つと思います。科学を伝えていく側は、モード2科学について理解していた方が良いのは、間違いなさそうです。
最終的に一般人とのコミュニケーションをとる場合、平川さんの章が役に立つでしょう。
これらの章は、先に書いたように、書かれたままを提示して科学コミュニケーションとするにはつらいというのが事実ですが、科学コミュニケーションの指針として大いに使える本だといえます。

不安に悩まされている人は

一般人は、松永さんの章と片瀬さんの章だけを読むことで混乱せずに済むでしょう。
松永さんの章で取り上げられている食の問題は、毎日の生活の問題です。マスメディアからは、さまざまな情報が入ってきますが、それをどう受け止めたらいいか。生活に密着した一生モノの知識になることは間違いありません。
今、まさに直面している放射性物質と健康に関する話題は、片瀬さんの章で扱われています。放射性物質による健康被害対策として、最近話題になっている方法が、身も蓋もなく否定されています。不当な扱われ方をしているわけではないんです。本当に身も蓋もなく否定できるものなんですから。気分を害するひともいるかもしれませんが、そういった方は、自分が何を求めているのか考える必要があるでしょう。色々と話題になっているけれど「本当のところどうなのか?」を知りたい人にとっては、とても有用です。

今、誰が読むと良いのか

東日本大震災以降、ニセ科学(ホメオパシーやらEM菌やら放射能対策グッズ)が広く一般人に受け入れられているという印象を持っている人は多いでしょう。この状況をきっかけに、専門家の中にもニセ科学のまん延に危機感を持った人がいるとおもいます。これまで非合理批判なりニセ科学批判なりをしてこなかった人たちが、立ちあがってきている場面ではないでしょうか。
僕は、こういった層にこの本を読んでもらいたいと考えています。なぜなら、専門家が得意な「科学のやり方(モード1科学)」では目の前の問題に対応できないからです。専門家にとって、ニセ科学は科学的な誤りを簡単に見抜けるものですし、誤りである根拠も簡単に用意できるでしょう。科学的な正誤の問題ならよかった。でも、問題の焦点はそこにはないのです。
もちろん、専門家による情報提供はとても重要ですし、有難いものです。しかし、問題点を最も伝えたい相手である一般人とのコミュニケーションの問題に立ち入ると、正しい情報と詳しい説明だけではどうにもなりません。そこでこの本の内容が役立ってくるはずです。

本当だったら1+2+4章と、3章+付録という2冊に分かれていればよかったのにと僕は思いました。その方がターゲットが絞り込めて、格段に宣伝しやすいですから。
というわけで、1番のお勧めは、最近の情勢に危機感を持ち、積極的に情報発信をしていかなければならないと思い始めた専門家ということになります。いま、科学の情報を必要としている一般人は3章と付録を読み現在の問題に対処する。科学の考え方の基礎は他の本で身につけてから1+2+4章をじっくり読むという読み方がよいのではないでしょうか。

*1:催促したともいいます。

*2:一般的にいう「自然科学」のことと考えていいかと思います。

*3:科学者に限定しているわけではありません。専門知識を持つ一般の人も含みます

信奉者の説得についての経験談と思うこと

何度か語っていることではあるけれど、僕は超常現象信奉者として、後には超常現象懐疑論者として掲示板上での議論を続けていた。話題は超常現象だけにはとどまらず、俗にいう「ニセ科学」の議論になったことも沢山ある。
そういった歴史の中で、信奉者に説得を行ったことも少なくない。オープンの場で行ったこともあるし、メールでのやり取りのこともある。これから、何度か説得についての僕の思いを書いていきたいと考えているのだけど、はじめに、僕が信奉者の説得についてもっている印象を書いてみたいと思う。当然、客観的事実とか普遍的な原則とかを話したいわけではなく、あくまで経験談であり、印象論にすぎないことには注意してもらいたい*1

説得の受け入れやすさ

僕は傲慢にも「科学的考え方の啓蒙をするんだ」という思想を持っていた*2。だから、信奉者とのコミュニケーションが説得になるのも自然なことだった。結果、様々な人に対して説得しようと試みてきた。その中で思うことがある。それは、年齢や性別によって説得の受け入れやすさが違うという傾向があるのではないかということだ。
ざっくり言えば、年齢は若い方が説得を受け入れやすい。そして、女性の方が説得を受け入れやすいということを感じた。ここにはなんらかの理由があるのかもしれないけれど、特にアイデアもないので印象を語るだけにする。ただ、40代以降の男性を説得対象に選ばない方が良いだろうということだけは言ってしまおう。*3

信奉者の説得が成功するなんて稀なことだ

説得に関して言っておかなければいけないと思うのは、説得が成功することなんてまずないということだ。もし、説得に挑戦したことがある人なら嫌というぐらい感じていることだと思う。これについては、きちんと理由があると考えているし、「説得が成功しないなら説得コミュニケーションにたいした意味はない」という考えは間違いだと思っている。ただ、この話はまた次の機会にしたい。
逆に驚くべきことだと思っているのは、説得に成功したことも何度かあるということだ。ここにそのやり取りを公開することはできないのだけど、確かに考えを変えてくれたようだった*4
僕は元超常現象信奉者で「本当のことを知るためなら自分の今の信念なんてなんぼのもんじゃ」と考えていたにも関わらず、信奉者から懐疑論者に転向するのに年単位の時間を要した。信念を変えるのはそれほど難しいことなのだと思っている。それなのになぜ、僕から説得されたぐらいで信念を変えてしまうことができたのだろう。もちろん、強固な信念をもった信奉者ではなかったということもあるだろうけど、それだけじゃないのではないか。

信念を変える足掛かりがあるのかもしれない

僕が直接的な対話で説得に成功した人というのは、例外なく育児中の母親だった*5。子供の健康や幸せを思う気持ちから自発的に色々なことを調べ、ニセ科学やニセ医療にはまった人たちだったのだ。
たぶん、母親たちの子供を思う気持ち*6が、自分の信念を覆すときの支えになったのではないか。僕はここに答えがあると考えている。それは信念を変えるための足掛かりをもっているということだ。
多くの人は、自分の信念を否定されると人格を否定されたと感じてしまう。批判活動なんてことをしているとよくぶつかる話だと思う。だけど、これは当然のことだろう。信念というのは、自分が自分であるという確かな足場なんだから。足場を崩されて宙ぶらりんになることに反発するのは当然のことだ。
しかし、育児中の母親は「子供のため」という足場さえ守れるのならば、他の信念を変えることもできるのではないだろうか。

崩さなくて済む足場をつくろう

育児中の母親の説得ができたというのは、結果だけで見れは成功だった。でも、こう考えていくと危うさも残ったままだと気付く。彼女たちが子育てから解放されたとき、人知れず「崩れない足場」もなくなってしまうことになる。
懐疑論者は「事実に拘ること」「証拠の強さに応じて信じること」「不正確な認識、間違いは継続的に修正すること」なんかを足場にすることで、意見を変更しても足場が崩れない状態を作ることができている。だからこそ、新たな証拠が今まで信じていたことを覆しても耐えることができる*7
僕が懐疑主義とか、科学的思考とか、クリティカルシンキングを推す理由というのは、こういうところにある。自分の信念にとらわれて硬直してしまうことを防げる。つまり「自由」のためだ。

*1:それでも、なんらかの意味があると考えているから公開するわけなんだけど

*2:そして今も持っている。ただ「啓蒙」という小難しい言葉が自分の考えに合っているのかは、未だによくわからない

*3:不快感を生むだけで何のプラスの意味もない言及のため反省して消しました。

*4:絶対数は少ない。もちろん、表面上考えを変えているように見えてただけという可能性もあるけど、僕はそう思っていない

*5:「議論をギャラリーとして見ていて、考えを変えました。」と言われたことも何度かあるけれど、その人たちは含まない

*6:周りからのプレッシャーみたいなものもあるかもしれないけれど…

*7:とはいえ、そこまで完璧な人はいなくて、新たな証拠を受け入れるのに時間がかかることもある

『アメリカ陰謀論の真相』はアメリカ政府の陰謀か

文芸社の高橋様より献本頂きました。ありがとうございます。

本書は、あの『陰謀論の罠 』の奥菜秀次さんが再び陰謀論を取り上げて種明かしを行った本である。内容は陰謀論マニア奥菜クオリティである。

『アメリカ陰謀論の真相』目次は以下に

  • まえがき
  • アメリカは真珠湾攻撃を察知していたが、英国を救い破綻した経済を立て直すため、あえて一撃を待った。
  • 歴史を影で操り、世界戦争を画策する米英資本家の悪行!
  • 20世紀最大の陰謀 − ケネディ大統領暗殺事件
  • 北ベトナム政府はベトナム戦争終結後もアメリカ人捕虜を密かに拘束し、アメリカ政府はそれを知りながら彼らを見殺しにした!
  • 氷山との衝突事故で沈んだタイタニック号は、実はアメリカの大資本家の手で他の船にすり替えられ、故意に沈められていた!
  • キング牧師暗殺犯は冤罪で、真犯人は米政府関係者だった!
  • ロバート・ケネディ暗殺犯は洗脳され、現場には共犯者がいた!
  • ウォーターゲート事件謎の情報源が示す、軍産複合体の魔手!
  • ガイアナ人民寺院集団自殺の背後に、CIAの策謀があった!
  • 911テロ陰謀論
  • 9.11テロの首謀者ビンラディンは殺されていなかった!
  • エピローグ − 感覚と論理の差
  • あとがき − アメリカ陰謀論から見る日本の未来
  • 参考資料一覧

本の構成は「陰謀論」として、世に出回っている陰謀論の説明があり、「真相」として事実が語られるという形式をとっている。つまり、トンデモ超常現象XXの真相やASIOSの謎解きシリーズ などと同じ形式である。この形式だと、そもそも詳しく知らない陰謀であっても謎解きを楽しめるのでありがたい。


ただ、今回の本については「ライト層でも問題なく読めますよ」とは言いにくい面もある。『検証 陰謀論はどこまで真実か』に比べるととっつきにくいというのが正直なところだ。短い文章の中に情報を詰め込みすぎているところがある。ただし、それはより深く真相へ切り込みたい層にとっては、メリットとなるだろう。読み物ではなく、資料として扱いたいところだ。


個人的には、調べよう調べようと思いつつ、全く手付かずでほったらかしにしていたジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関する陰謀論が、90ページにも渡って、詳しく取り上げられている点がうれしかった。
私が知っていた結論はオズワルド単独犯説が有力というぐらいのところだった。私の中の最大の謎として「政府文書が2039年まで非公開なのはなぜか?」という疑問が残っていた。オズワルド単独犯ならば、単なる殺人であって、なにも機密にするような情報などないと考えるのが適当だろうと。
この本によれば、2039年まで非公開だったはずの資料は既に公開されているらしい。私が知らなかったというだけで、最大の謎でもなんでもなかった。機密になった理由はNSAとK○○関係なのだろう*1


ケネディ大統領の陰謀論については、UFO関連の陰謀論*2と似た面もある。よく考えればUFO陰謀論も同世代のものだ。そう考えると、お互いがお互いの手法を真似して使っていたのではないかということも考えられる。1980年代以降のアメリカは陰謀論に染まっていた。アメリカの陰謀論史という視点で捉えてみるのも面白いかもしれない。


陰謀論者がどのようにして陰謀を作り上げたのか。どのようにして荒唐無稽な陰謀論に説得力を持たせたのか。陰謀論メーカー達の手法は同じことの繰り返しである。この本でそういった手法を知っておくことは、今後も必ず現れる陰謀論を見極める力となるだろう。


陰謀論を信じる人々に対する評価や、ソーシャルメディアに関する考えなど、奥菜氏の考え方に同意できない点はあるものの、資料の質には影響はない。


最後に、これだけは絶対に言っておかなければならない。ところどころで出てくる「正直、すまんかった((c)佐々木健介)」とか「禁則事項です((c)朝比奈みくる)」とか・・・については、ハードな地の文から非常に浮いている。奥菜氏には猛省していただきたい!!


『アメリカ陰謀論の真相』

*1:機密の理由はこの本でも語られていないので、私の推測にすぎないけれども

*2:政府は宇宙人との密約を隠している…という陰謀論

批判者に意識してもらいたい3つのこと

ぼくは元超常現象信奉者で、信奉者としての議論経験も少なくない。そんな経験から、信奉者と議論する場合に、批判者として気を付けたいポイントをあげてみる。相手が純真な信奉者の場合は特に気を付けてほしいところ*1

1. 信奉者をユニークな一人の人として扱う

あたりまえのようで、あたりまえにできている人は少ない。
信奉者の主張には、どっかで聞いたような話が多いのは事実。そして何度も見てきたような間違いをしていることも多い。でも、やっぱり詳細は色々と違うものだから「またあのパターンか」「周回遅れ」「FAQ」と思っても、目の前の信奉者の意見を注意深く聞き、目の前の信奉者の意見に反論して欲しいと思う。
信奉者の意見をFAQとして一般化されたものへカテゴライズして、FAQへの返信を書いてしまうのは問題だ。信奉者は「こいつ、全くぼくの話を聞かないでどこかの誰かの話をしてる。話にならん。」とか「結局自分語りしたいだけか。」と思う。

2. 信奉者の中では一貫した正しい意見であることを意識する

信奉者の意見には同意できないからこそ、批判者になっているはず。だから信奉者の意見に同意できないのは当然。でも「内部矛盾している」とか「合理的思考ができない」とか「徹底的に間違っている」という前提で議論を続けると、極端にすれ違うことになる場合が多い。
ひとは意外と合理的で、まがりなりにも合理的な筋道が立たないものを信じるのは難しい。間違った結論に達する過程には、事実誤認があったり、論理展開が間違っていたり、飛躍があったりするもんだけど、信奉者がどのような筋道で信じているのかが重要*2。多くの場合、信奉者と批判者の一番の違いというのは、暗黙の前提が全くことなることが原因なので、そこまで落とし込むことができたら第一段階成功と考えていいと思う。
前提の相違という視点を持たずに表面化した話題の議論に終始すると、信奉者からは「全く理解不能だ」とか「頭から否定するだけ」なんて見られる。

3. 批判者は自分の間違いや偏りに気付きにくい

超常現象批判者やニセ科学批判者は、おおよそ正しい結論をいう。だからこそ、自分の間違いには気付きにくく、指摘されにくいということには注意したい。科学的な思考、クリティカル・シンキングなんてしなくても、「キーワード」+「批判」なんかでGoogle検索をすれば、見た目いっぱしの批判者になることができる。そこまで酷くなくても、中途半端な理解で正しい結論を言うことができる。そこが落とし穴になる。
それから、様々な思考の「バイアス」も注意したいところ。思考のバイアスをもっているのは信奉者だけではない。批判者ももっている。信奉者が重大な問題を起こしていて、それが事前に予測可能に見えたとしても、「後知恵バイアス」かもしれない。信奉者が愚かにみえたとしても「基本的帰属錯誤」かもしれない。
批判者が陥りやすいバイアスについては、過去のエントリも参照のこと。『信奉者の問題を過大評価する可能性のある4つのバイアス - Skepticism is beautiful
ここら辺のことを理解していないと、信奉者の能力を不当に低いものと評価してしまう。信奉者は「バカにされている」とか「理想論ばかりだ」とか思う。

信奉者を説得するつもりのない人へ

ぼくは、批判対象になるような信奉者も、ゆるい信奉者も同じような間違いをしていたり、同じような環境にあると思う。だから、批判対象になるような信奉者に対する言葉は、ギャラリーとして議論を眺めるだけののゆるい信奉者にも同じように伝わると考えている。
そんなわけで、信奉者を説得するつもりのない批判者であっても、参考になる点はあるんじゃないでしょうか。

*1:対象にしているのは、ある程度の議論ができる信奉者となる。殆ど何の意見も持っていない「なんとなく信奉者」は対象外。

*2:ただ、ある程度の一貫性のなさは、あって当然なので気にしない。

信奉者だった僕はどのようにして懐疑論者と呼ばれるようになったか

dlitさんの「メモ:サイエンスコミュニケーションと科学者/研究者/専門家に何を求めるか問題 - 思索の海」に始まり、ばらこさんの「サイエンスコミュニケーションで素人にできることを考える(改題)(2) - ばらこの日記」、TAKESANの「或るトンデモ支持者の履歴――科学的懐疑主義に目覚めるまで(2011年7月19日追記): Interdisciplinary」、どらねこさんの「サイエンスコミュニケーションで自分なりに考えていること - とらねこ日誌」を受けて、僕の遍歴も公開します。

小学生まで

超常現象関連については、ごくごく普通の子供でした。なんとなく信じていたというだけで、とりたててなんだかんだはありませんでした。このころプログラムを始めたのが論理的思考の形成には役立ったかもしれません。

中学生の頃

木曜スペシャルでやっていた矢追純一氏のUFOスペシャルにはまっていました。UFOの話題が記憶に刻まれたのはこのころでしょう。今でもUFOの話題は大好物です。このころ、友人が『ワンダーライフ』誌*1を買っていて、回し読みをしていました。ある程度の超常現象知識を得たものの、とても詳しいというようなことはありませんでした。

大学生の頃(初期)

この頃から本格的に超常現象信奉者としての歩みが始まります。
インターネットが普及しはじめ、普通の人が普通のプロフィールをネットに上げる時代になりました*2。その流れの中で、ちょっとアクのあるページを作ろうと思い、超常現象の話題を扱うことにしました。飛鳥昭雄にはまり、偏った超常現象の知識を得ることになります。飛鳥昭雄にはまった理由は、彼の説が一見論理的で筋が通っているように見えたことです。そして、様々な超常現象を繋げて統一する考え方も気に入りました。

大学生の頃(中期)

ある超常現象を否定する掲示板に「そんなになんでもかんでも否定したら面白くないんじゃない」といったような言葉で登場したのを覚えています。その投稿への返答は「根拠なくなんでもかんでも肯定するのは面白いんですか」といった感じのものでした*3
おそらく、これが超常現象関係の議論を始めるきっかけとなりました。僕は掲示板の議論で「腕試し」をしてみようと思いつきます。自分の持っている超常現象の知識で、超常現象否定派を論破できると考えていたのです。超常現象の話題で議論を行う掲示板に、信奉者として見境なく参加しました*4
もし、僕に特殊なところがあったとすれば、信奉者であっても、論理は崩したくなかったということと、科学に対する信頼があったことかもしれません。超常現象は科学で解明できるはず*5というのが持論でした。
もともと自分からケンカを売りまくっていた状態でしたので、激しい人格否定などの攻撃を受けることも多く、ずいぶんと傷ついたこともあります。しかし、もっとも入り浸っていた掲示板では、相互理解をした上で否定される場合もあり、単なる論のぶつかり合いにはなりませんでした。信奉者と否定派の間に独特の信頼関係すら生まれていました。このときの相互理解というスタンスは後々まで僕に影響を与えています。

大学生の頃(後期)

聡明な方々と議論を繰り返していくうちに、有難くも誠実で真面目な信奉者といわれるようになりました。まだ超常現象を信じていたものの、クズとしかいいようのない肯定論がまかり通っていることに納得がいきませんでした。信奉者でありながら、ダメな肯定論を批判していく立場になりました。その過程で、超常現象を否定する人の論理、つまり、科学的思考(科学的懐疑主義)の方法を模倣するようになりました。模倣を続けるうちに、その価値も理解するようになってきました。

社会人になってから

そうこうするうちに、自分では超常現象を信じている立場として議論や活動をしているにもかかわらず、一部では否定論者や懐疑論者と呼ばれることも出てきました。そんな中、超常現象懐疑論者のすごい人に出会います。超常現象に関する圧倒的な知識と、議論からにじみ出る聡明さに衝撃を受けたことを覚えています*6
その衝撃が影響し、このころやっと超常現象関連の本、科学的思考に関する本を色々と読むようになります。実際のところ、議論で論理性と科学的思考は鍛えられていたものの、超常現象について、たいして詳しいわけではなかったのです。

知り合いがマルチ商法

知り合いがマルチ商法にはまり、家族崩壊寸前までいったことをきっかけに、悪徳商法に関して調べるようになりました。そして、マルチ商法を信じる姿が超常現象の信奉者ととても似ていることに気づきます。自分の知識、考え方が転用できることに気づき、奔走しました。
ここら辺の経験が、後のニセ科学に対する危機感につながっているように思います。

知識で武装

超常現象に関する知識がつみあがってくると、ナイーブな信奉者でいることはできなくなってしまいました。この頃には本格的に懐疑論者と呼ばれるようになり、懐疑論者を自称するようにもなりました。必要なのは、「論理」「考え方」「個別領域の知識*7」であることを理解します。
ここら辺の話までで7年ぐらい前です。

今に至る

その後、色々なハンドルネームでネット上に超常現象の種明かしネタや、色々な批判をばらまく活動をするようになり、今に至ります。


初期に議論した方々からは「生還した数少ない人」と呼ばれたりしてますが…。

*1:現在の『ムー』誌のようなもの。ムーよりアクが強かったイメージがある

*2:主に大学生が学校のパソコンを使って。

*3:かなり不正確だと思う。5年ぐらい前まではログも持っていたのだが。

*4:当時は個人のWebページに設置された掲示板で議論を行うのが一般的でした

*5:もちろん、ありきたりな結論ではなく、科学的発見として…ですが。

*6:決して、わかりやすい話ではありませんでしたが

*7:ここでは超常現象の知識のこと

モテるUFO女子力を磨くための4つの心得「懐疑本を読めない女をアピールせよ」

こんにちは、恋愛マネジメントを専攻しているジーン・ヒングリー夫人です。私は学歴も知識もありませんが、恋愛に関してはプロフェッショナル。今回は、モテるUFO女子力を磨くための4つの心得を皆さんにお教えしたいと思います。

1. あえて2〜3世代前のUFO本を飲み会に持っていく

あえて2〜3世代前のUFO本を持っていくようにしましょう(ドナルド・キーホーの『Flying Saucers Are Real』や、フランク・スカリーの『Behind the flying saucers』なんかがいいでしょう)。そして飲み会の場で好みの男がいたら話しかけ、わざとらしくUFO本を出して読んでみましょう。そして「あ〜ん! このUFO本、本当にマジでチョームカつくんですけどぉぉお〜!」と言って、男に「どうしたの?」と言わせましょう。言わせたらもう大成功。「UFOとか詳しくなくてぇ〜! ずっとコレ読んでるんですけどぉ〜! 時代背景がわからないんですぅ〜! ぷんぷくり〜ん(怒)」と言いましょう。だいたいの男はロズウェル事件について語りたがる習性があるので、古かったとしても1980年代の本を読んでいるはずです。

そこで男が「ロズウェル事件には興味ないの?」と言ってくるはず(言ってこない空気が読めない男はその時点でガン無視OK)。そう言われたらあなたは「なんかなんかぁ〜! 最近、ストレンジクラフトとかが人気なんでしょー!? あれってどうなんですかぁ? 新しい話が欲ききたいんですけどわかんなぁぁああい!! 私かわいそーなコ★」と返します。すると男は「もう一昔前でしょ? 最近はUFOの話題なんかないよ。本当に良くわからないみたいだね。どんな本がいいの?」という話になって、次の休みの日にふたりで神保町めぐりのデートに行けるというわけです。あなたの女子力が高ければ、男が古本を買ってくれるかも!?

2. Twitterで「王」を使うとモテる

「ペンフレンド募集中」とか「UMMO」などを表現する「王」をコメントに入れると、Twitterの男性ユーザーは「なんかこの子カワイイなぁ」や「支えてあげたいかも」と思ってくれます。インターネット上では現実世界よりもイメージが増幅されて相手に伝わるので 「王」 を多用することによって、男性はあなたをおちゃめで指先が敏感な女の子だと勘違いしてくれるのです。そういうキャラクターにするとほぼ絶対に同性に嫌われますが気にしないようにしましょう。

3. とりあえず男には「えー! なにそれ!?  知りたい知りたーい♪」と言っておく

飲み会などで男が女性に話すことといえば墜落円盤の話や異星人の検死解剖の話ばかり。よって、女性にとってどうでもいい話ばかりです。でもそこで適当に「ブラジルのアントニオ・ビラス・ボアスは溜まってたんですかね?」と返してしまうと、さすがの男も「この女ダメだな」と気がついてしまいます。ダメ女だとバレたら終わりです。そこは無意味にテンションをあげて、「えー! なにそれ!? ビル・ムーアってキノコカットなんですか♪」と言っておくのが正解。たとえ興味がない話題でも、テンションと積極性でその場を乗り切りましょう。積極的に話を聞いてくれる女性に男は弱いのです。

いろいろと話を聞いたあと、「ドナルド・メンゼルは筋金入りの否定派で、まつげがUFOなんですね! 覚えたぞぉ! メモメモ!」とコメントすればパーフェクト。続けて頭に指をさしてくるくる回しつつ「ちゃららー ちゃららららー だーーーん!」と言って、「どうしたの?」と男に言わせるのもアリ。そこで「私の中の矢追純一がUFOスペシャルでありますっ☆」と言えば女子力アップ! そこでまた男は「この子おもしろくてカワイイかも!?」と思ってくれます。私は学歴も知識もありませんが、こういうテクニックを使えば私のような額に焦げ跡のある女子のほうがモテたりするのです。男は優越感に浸りたいですからね。

4. 本屋ではUFO懐疑本を読めない女をアピールせよ

男と本屋に入ったら、真っ先に「Watch the Skies!」などの懐疑本を探して「あーん! 私これ読めないんですよねぇ〜(悲)」と言いましょう。するとほぼ100パーセント「どうして? 嫌いなの?」と聞かれるので、「嫌いじゃないし読みたいけど読めないんですっ!王」と返答しましょう。ここでまた100パーセント「嫌いじゃないのにどうして読めないの?」と聞かれるので、うつむいて3〜5秒ほど間をおいてからボソッとこう言います。「……だって、……だって、ビリーバー一刀両断じゃないですかぁっ! UFO肯定派かわいそうですぅ! 60年以上もUFOを待っているのにぃぃ〜(悲)。夜空の光点ぐらいしか見てないんですよ……」と身を震わせて言うのです。

その瞬間、あなたの女子力がアップします。きっと男は「なんて優しいオーソンのようなコなんだろう! 絶対にゲットしてやるぞ! コイツは俺の女だ!」と心のなかで誓い、あなたに惚れ込むはずです。意中の男と付き合うことになったら、そんなことは忘れて好きなだけ懐疑本を読んで大丈夫です。「読めないんじゃなかったっけ?」と言われたら「コンドン報告とか、ルッペルトレポートとかは基礎資料でしょ」と言っておけばOKです。