血液型性格判断FAQ -2-

血液型性格判断FAQの2回目です。

1回目はこちらです。「血液型性格判断FAQ -1- - 僕と懐疑の関係

Q. 統計的に有意な差があるのならば、性格判断は正しいのでは?

 前の項目で示したように、ランダムなデータであっても「差異」は生じてしまうことが分かります。むしろ全く差が出ない方が不思議です。ただし、印象論ではなく「統計的に有意な差」であれば、単なる偶然で生じる可能性は少なくなります(正確には、標本数 標本の大きさと有意水準の設定の問題などがあり、単に「有意差」という言葉だけでは何も言えません)。しかし、それでも試行回数を多くすれば、いつかは必ず「統計的に有意な差」も生じてしまいます。

 問題はその「統計的に有意な差」が、一貫性をもって繰り返し観察されるかということです。例えば「積極性」という性格傾向に血液型間の統計的に有意な差が検出された場合でも、あるときはA型が高く、ある時はB型が高い…といった状況では、特定の血液型と特定の性格が関連付かないため、血液型性格判断の根拠としては使えません。

Q. 統計的な有意差があるなら、性格から血液型を当てたり、血液型から性格を予想したりできますよね?

 原理的には、正答率を上げることはできます。しかし「エフェクトサイズ(効果量)」の問題があり、どれぐらい正答率を上げることができるかはエフェクトサイズによります。
 エフェクトサイズを理解するために参考になるリンクは以下です。 http://transact.seesaa.net/article/105216733.html

  話を簡単にするため、日本人全体を母集団として「外向性(外向的である/ない)」と血液型の関係を調べたという仮定での話をします。

 この前提で「外向的である」と判断されたグループも「外向的でない」と判断されたグループも日本人の血液型分布と同じ分布(A型 : 約40%, O型 : 約30%, B型 : 約20%, AB型 : 約10%)になる場合、統計的な差が全くないと言えます。ここでは日本人の血液型分布を4:3:2:1の比率だったと仮定し具体的に言うと、調査対象が20万人であれば、「外向的である」グループも、「外向的でない」グループも、A型4万人, O型3万人, B型2万人, AB型1万人の場合、統計的な差が全くないということです。

 実験した結果、以下のような結論が得られたと仮定します。この結論から明らかにB型は外向的であり、A型とO型は外向的でないことがわかりました。統計的にも信頼度99%以上で有意な差です。

    外向的である:A型3.9万人, O型2.9万人, B型2.2万人, AB型1万人
    外向的でない:A型4.1万人, O型3.1万人, B型1.8万人, AB型1万人

 さて、このような仮定をおいた場合に、統計的に有意な差があるから、血液型から性格を当てられる、または、性格から血液型を当てられるということになるでしょうか。

 血液型がA型の人の性格は「外向的でない」といったとき、4.1万人には当てはまりますが、3.9万人には当てはまりません。つまり、どっちを選択しても当たる確率は50%前後でしかないのです。

 逆に「外交的な性格の人」は何型でしょうか?確率的にはA型と答えておくのがもっとも当たる確率が高いのです。もっと言えば「外交的な性格でない人」は何型かと推測する場合もA型と答えておくのがもっとも当たる確率が高いということになるのです。

 つまり、統計的に有意な差異があっても、それだけで「個人の性格が当てられる」「血液型が当てられる」とは言えないということです。

Q. 多くの研究者が同じ血液型には同じ性格を当てはめているよ

 異なる研究者が同じ性格を当てはめているなら、その分類にも一定の根拠が有りそうに思えます。

 しかし、実際に検討してみると同じところもあるようですが、代表的な少数以外は一致していないようです。たとえ一致していたとしても先行する主張を引き継いだだけの可能性もあり、血液型性格判断が正しいという根拠としては使えないといえます。
「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006782108


Q. 血液型が性格を形作るメカニズムも色々と説明されているよ。血液型によって性格が変わるのは進化的説明もできます!

 説明ができることと、その説明が当たっているかは独立して考えなければいけません。説明できたとしても、その説明が正しくなければ意味はありません。全くメカニズムを構築できない理論よりは、メカニズムを構築できる理論の方が見込みはありますが、その理論が正しいかどうかとはやはり別問題です。

 血液型によって罹りやすい病気があるのならば、性格的なものにも影響を及ぼしてもおかしくないといった主張もありますが同じことです。まずは性格に差が出るということが確認されるのが先です。

 そもそも血液型によって性格が違うという前提部分に議論がある状態で、メカニズムをうんぬんすることは建設的ではありません。

Q. 話のきっかけに使ってるだけなのに、目くじらをたてるような問題ですか?

 確かに単なる無根拠な占いのような感じで使われている場面の方が多く見受けられます。今回のFAQでは、占いに類するものは扱わないという前提ですので、問題視しません。ただ、表面上はそうであっても、一旦批判されると熱心な信奉者の面が出てくる場合もあるので(科学的に証明されているという主張を始める人もいる)、本当に単なる占いとしか思っていないのか、真意は批判されるまでわからないかもしれません。

 あなたが不利益を蒙る状況を想定してみてください。例えば、社会的にも問題のある行動で、あなたが生理的に嫌悪するような行動(仮に「行動A」とします)があったとします。あなたは、「行動A」に嫌悪感を抱いているので、絶対にそのような行動はしません。そういったとき、血液型性格判断で「あなたの血液型の人は行動Aをとりやすい。」などと書かれていたらどんな気分になるでしょうか?また、知人から血液型だけを根拠に「行動Aをとりやすい人なんだ」と思われるとしたらどうでしょうか?

 しかもそれは単なる迷信ではなく、いくばくかの根拠があるのだと主張されたとしたら。

 

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