血液型性格判断FAQ -1-
血液型性格判断とは何?
血液型性格判断とは、ABO型の血液型から人の性格を分類でき、その分類が妥当であるという主張のことです。通常は心理学的な分類というよりも「A型は几帳面、O型は大雑把」などのような、単純なステレオタイプとしての分類のことを指しています。多くの場合は、どの職業に向いているなどという高度に複雑な要因に影響するまで大きな相関があると考えます。また、性格からABO血液型を類推できるという信念にもつながっています。
実は、血液型性格判断を肯定する人、否定する人の間でも様々な解釈があり、厳密な議論において混乱しない程度の共通認識は存在しないというのが本当のところです。一口に血液型性格判断と言っても、占いと殆ど見分けがつかないようなものから、ごく小さい統計的なデータの偏りの話まで、話し手によって指しているものが違います。
「血液型性格相関説」と「血液型性格判断」を全くの別物として扱う人もいますし、そうでない人もいます。
多様性について詳しく知りたい方は以下の論文を参照してください
「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/15/1/15_1_33/_pdf
扱うものと扱わないもの
このFAQでは扱う対象と扱わない対象があります。扱うのは、客観的根拠があるように主張されている血液型性格判断で、扱わないのは占いと同じような使われ方をしている血液型性格判断です。
扱うもの
扱わないもの
- 血液型占い
Q. 自分や知り合いを見ると関係あるとしか思えないよ?(当たっているように見える理由)
これから説明しますが、血液型性格判断になんらかの肯定的な感情を持っている場合「関係あるようにしか思えない」と考えてしまうのは自然なことです。しかし、それが客観的事実に基づいているかどうか?という話になると、あなたが抱いた印象とはかなり違う場合があります。
人間は間違ったことを信じてしまうことがあります。そのメカニズムの一例として「確証バイアス」というものがあります。血液型性格判断は当たるという先入観が存在すると、その先入観に当てはまるものはよく目につき、先入観に当てはまらないものは無視されてしまうということが起きます。このことによって、総合的に血液型性格判断が当たっているという印象が強められます。
また、「バーナム効果(フォアラー効果)」というものも知られています。たとえば、あなたの血液型がO型だったとします。このとき「O型はこのような性格傾向があります」というように文章を提示されると、それが自分によく当てはまるような気がしてしまう方向に誘導されてしまいます。
さらに「後知恵バイアス」というものも影響している場合もあるでしょう。ある結果が得られたとき、その結果がわかってから「そうなるのは前から分かっていた」「普通に考えればそうなるに決まっているじゃないか」と感じてしまうのが後知恵バイアスです。結果が得られる前であれば様々な可能性を考えるのにもかかわらず、結果が得られてしまうとそれを当たり前だと感じてしまうのです。
血液型性格判断では、相手がA型であることが分かってから「そういえばあいつは几帳面なところがある。A型だから当然だな。A型は几帳面だ。」などと考えてしまう傾向があるということです。ここで抱いた肯定的感情は記憶を経由することで前後関係が曖昧になり、後知恵だったのに「前からそう思っていた」といった記憶になってしまうこともあります。
このように、「当たっている」という判断が印象に基づくものである場合、その印象が正しくない可能性はかなり残っています。実際に「O(A,B,AB)型はこんな性格」というような説明の血液型の表記だけをシャッフルして調査してみると、O型の説明だとしてAB型の説明を渡されたにもかかわらず、自分の性格に合っていると判断してしまったO型の方がたくさんいたといった例も見られます。
当たっているように感じているのは本当でしょうが、それは様々なバイアスが働いた結果かもしれません。
Q. 有名人を血液型で分類したものとかも当たってるよ?
こういった考え方には様々な問題があります。具体的にいくつかあげてみましょう。
- 有名人の性格はあなたが知っている通りのものか(あなたの印象には、役柄、演技などの影響はないか)
- 当てはまらない有名人を無視していないか(ランダムに選んだ芸能人で評価しているか)
- 当てはまらない説明を無視していないか
- こじつけ的な説明は使っていないか
これらのことより、有名人などを対象とした場合、知り合いや自分を対象とした場合よりも、前の項目で説明した「確証バイアス」が入り込む余地は、より大きくなることが予想されます。
有名人と血液型の関係はこのようなもののほかに「ホームランバッターにはO型とB型が多く、A型とAB型は少ない」といったものや「政治家にはO型が多い(O型は政治家向きである)」といったようなものも多いようです。
実は、もとのデータが全くのランダムであっても、様々な方法でデータをとったり、何度もデータをとったりすることによって、どこかで偏りを見つけることができるという事実が知られています。専門的には「タイプ1エラー(第一種の過誤)」と呼ばれています。
ここでは、プログラムの疑似乱数を用いて200件程ランダムに血液型を並べ、最初の10件を取り出してみました。数回同じ処理を繰り返してみるだけで、かなり偏ったデータが現れることに気がつきます。たとえば以下のようなデータが得られました。
- 「O A B B B B B O B B」:圧倒的にB型が多い
- 「AB O AB AB O B AB B O AB」:AB型とO型が多い
200件全部では、それぞれの血液型が出てきた回数は以下のようなデータとなりました。数が少し大きくなると、そんなに偏っていないことが分かると思います。*2
- O:45, A:50, B:52, AB:53
- O:60, A:42, B:51, AB:47
このようにランダムなデータであっても、回数を繰り返せば必ず偏ったデータを得ることができます。血液型性格判断でも、色々なデータを探せば、必ず偏った血液型のデータを見つけることができるのです。つまり「偏ったデータがある」というだけでは、血液型と性格の関係を示しているということは言えないということです。
http://natrom.sakura.ne.jp/BloodType1Error.html
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*1:本来のURLは→です。
http://www.xsunx.org/columns/7aa_love/KetsuekiGataSeikakuhandan_NazoRiyouhouhou.html
*2:ここでは便宜的に4つの血液型の出現確率は同じにしてあります。