池内了『疑似科学入門』が懐疑論者ホイホイな件について
懐疑論者なら、何かを言わずにはいられなくなるのではないだろうか?
この本は疑似科学への入門書ではなく、疑似科学のことを知らない人へ免疫をつける事を狙った本。帯は「ニセ科学のわなに落ちないために」であって、書名よりむしろこっちの方が意図を的確に表している。池内了氏の問題意識と情熱は伝わったが、いかんせん論じている分野についての知識が情熱についてきていない。
はじめにで「疑似科学」を再定義しているが、それが既に一般の疑似科学という用語から乖離している。「再定義したんだから問題ないよね」という立場に立っていると言われても仕方が無い。「疑似科学」は一般的な用語なのだから、それに従って欲しかった。いらない混乱を持ち込んだところで誰が得をするのだろうか。
池内氏の再定義によって「科学で確かめられたもの以外は全て疑似科学」みたいな、とても嫌な雰囲気を作らないかと懸念してしまった。
確かに池内氏が言う第一〜三種疑似科学は、主張の仕方次第で全て疑似科学になり得る。しかし、扱っている題目で分類するとすれば、第一種は通常超常現象やオカルトと呼ばれる分野、第二種が普通の疑似科学、第三種は科学のグレーゾーンの話である。
池内氏ような分類の下で論じるのは不可能ではない。しかし、それならば疑似科学的な主張の仕方に焦点をあて続けるように一貫しなければ「あれ?疑似科学の話じゃなかったっけ??」というような主張の散漫さが出る事になってしまうだろう。そして実際にそうなっている。
論じている対象に詳しくないために生じた「事実誤認」「ダメな批判」「間違い」が散在しているように見える。大槻教授ばりの主張もある。
第4章は詳しい分野ではないが、それでも疑問を感じる点はあった。単なる陰謀論もあった。第4章の主題であるはずの「予防措置原則*1」はリスク論との間で揺れ動いているように読めた。混乱するだけなので、ひとまず中西準子氏のリスク論関連の本を読んでおくのが賢い選択だと思われる。
褒めるとしたら、第1章「3 超常現象の心理学」は菊池聡氏の本の非常に良いまとめであること。私としては菊池聡氏の本を読むのをオススメするものの、短いまとめとしてはよくできていると思う。それから、参考文献には優れたものが多いので、ポインタとして利用することはできるかもしれない*2。