僕らは病院やカゼのことを意外にわかってない

 酒井健司著『医心電信 よりよい医師患者関係のために』を読んだ。朝日新聞デジタル「アピタル」で連載している同名のコラムを書籍化したものである。

 僕らは意外にカゼのような一般的な病気のこともわかっていないし、病院との関わりかたもわかっていないってことをちゃんと理解できる本である。

 記憶があやふやだが、僕は確か30代になる頃まで最初から総合病院に行くのは普通の選択肢だと考えていた。身近な人から、どうせ何かあったら大きな病院に転送されるんだから、最初から総合病院に行く方が効率的だなんてアドバイスをもらったこともあった。
 子供ができると、普通のカゼの症状でも厳しい目で見られるようになる。カゼ気味になったら症状が軽いうちにすぐに病院に行って医者の薬をもらえ。抗生物質ももらってこい。医者に点滴や注射をお願いしてでもすぐに治さなければいけない。そんな事を言われるようになる。

 ダウトである。なんだかんだで僕はネット上で医師との関わりもあり、色々な話を聞く機会もあったので上のような間違いについては自分の中で既に訂正できていた。だが、だが、こんな間違いなんか20代前半で解決しておきたかった。

 医師にとっては総合病院は開業医からの紹介状をもらって行くところ*1、カゼを早く治したかったら栄養と休養しかない*2…なんて、改めて言うまでもない「常識」でしかない。だが、それを一般人はどのタイミングで知ることができるだろうか。何かのきっかけが無いとなかなかそういう情報にはたどり着けないのが現状じゃないだろうか。

 本の多くの部分は中学生でも理解できるだろうぐらい平易だし、ちょっと難しいところでも高校生ぐらいなら理解できると思う。そんなわけで、もうこの本を社会に出る若者たちの必修にしちゃってもいいんじゃないだろうか。それだけで医療にかかわる不幸が少し減りそうな気がする。

 無駄な家庭の不和も。

*1:最近なら紹介状なしで総合病院に行くと結構な追加料金をとられるので知っている人は増えているかも

*2:他にもがん検診、インフルエンザ、たばこの害、ワクチン、肝炎など、比較的良く聞く話題が盛り込まれている