『謎解き超科学』でニセ科学に騙されないための足場をつくろう
彩図社より『謎解き超科学』が発売されました。詳細な目次と担当者はASIOS公式ブログの該当記事をご覧ください。
内容はASIOS既刊「謎解き」シリーズと同じく「伝説」と「真相」パートで構成されています。ASIOS名義ですが、外部から菊池聡さん(オカルトニセ科学に詳しい認知心理学者)、黒川ゆきさん(日本一のホメオタ)、小波秀雄さん(ニセ科学に詳しい物理化学者)、道良寧子さん(ねこ管理栄養士)と、ニセ科学に懐疑的な人の間では有名な方々が執筆に参加されています。
私は「電磁波による健康被害」「磁気治療器の効果」「デトックス」「水からの伝言」「EM菌」「あとがき」を担当しました。
ASIOSがニセ科学批判??
さてASIOSといえば、超常現象を懐疑的に調べる団体で、今までの「謎解き」シリーズは全て超常現象がらみの話でした。そんなASIOSがなぜ?と考える方もいるでしょうか。しかし、超常現象の中には一大分野として「疑似科学」というものがあります。「疑似科学」と「ニセ科学」はお互いに重なり合うもの*1なので、それほど外れた話ではありません。
本書もニセ科学の話題は多いですが「キルリアン写真」や「相対性理論は間違っている」「ID論(インテリジェントデザイン)」など、従来から疑似科学の領域にあった話も出てきます。「ニセ科学批判本だ」と考えて読むと、ちょっと違和感をもつかもしれません。あくまでASIOS「謎解き」シリーズの1冊です。
義務教育の副読本に(ちょっとキツイ)
本書では、たくさんの根拠をもとに科学的に妥当だといえるのか?という視点で個々の項目について検証していきます。そのため、科学の考え方を身に付けるきっかけにもなるでしょう。僕は科学の考え方というのは、義務教育で触れるべきものだと考えています。ですから、この本も理科教育の副読本にしてほしいぐらいです。
ただ、1項目毎のページ数が少ないにも関わらず、内容はヘビーなものとなっています*2。ちょっと義務教育の子供たちが読むには厳しい内容です。むしろ大人が読んでおき、子供たちからの疑問に答えられるように準備しておくと良いのではないでしょうか。参考文献だけ集めても20ページぐらいにはなるでしょうから*3、深入りしたい方にもお勧めです。
反省点も
執筆者の一人ですが、懐疑論者を自称している者としては絶賛ばかりもしていられません。客観的立場に立ち、反省点もあげておきます。一番の反省点は、項目間の温度差が存在するということです。項目によって「自重しないマニアの追及」と「一般人に伝えるために優しく書こう」というふたつの雰囲気が存在しています。そのため、本書の総合的な評価は若干難しいところです。
謎解き超常現象シリーズのようにマニア向けとして評価しようとすると、掘り下げ度が足りなく思えてしまう項目がありますし、一般向けとして評価しようとすると、掘り下げすぎと思えてしまう項目があります。それぞれの項目が失敗しているのではなく、想定ターゲットが揺れ動いてしまっているのが反省点です*4。
それでも勧めたい
ネット上には優れたニセ科学批判がたくさん存在します。しかし、Webが普及した現在においても一般人でそのような批判を目にする機会がある人はごく一部です。だからこそ、この本が本屋に並ぶこと、そして一部のコンビニに並ぶことは大きな意味のあることだと考えています。初版発行部数はそれほど多くありません。増刷を繰り返し、より一般人の目につくようになることを祈っています。そして、この本の内容を信用するにせよ信用しないにせよ、一般の方にこういう問題点が指摘されているのだということを知ってもらうことが第一歩だと考えています。
あとがきについて
今回、あとがきを書くという大役を頂きました。今までWeb上では何度か書いてきた「科学的手法」とか「懐疑的手法」ということを、一般の方にもすんなり読めるように平易に書いたつもりです。「何をいまさら説明しているの?こんな分かり切ったこと説明するまでもないでしょ」と思ってもらえたら成功です*5。うまくできたかどうかは、皆さんに判断いただこうと思います。
拠って立てる足場をつくろう
この本で取り上げた疑似科学やニセ科学はごく一部に過ぎません。他にもたくさんの疑似科学、ニセ科学が世の中にはあふれています。この本によって、これから出会う新たな話題の内容を検討する足場を作れるのではないかと考えています。ぜひ『謎解き超科学』を読んでみてください*6。