シャープのプラズマクラスター掃除機について

まず最初に確認しておきたいのは高濃度のプラズマクラスター』が、「浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去」できるというのは、根拠のある話らしいということです*1。そういった前提を置いた上でも、件の掃除機の広告には問題があるという、消費者庁の判断は妥当なものだと思います。

広告では以下のような宣伝をしていました。

掃除機の中も、お部屋の中も、清潔・快適

掃除機内部で浄化したクリーン排気に乗せて高濃度7000「プラズマクラスター」を室内に放出。床と一緒にお部屋の空気まできれいにします。

ダニのふん・死骸の浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去

「掃除機を使うことで、部屋の空気をきれいにできる」と明確にうたっていたわけです。

「約15分で91%作用を低減します。(1㎥ボックス内での実験結果)」というように、(実情と合わない)実験環境での効果だと注記をしていてもあまり意味はありません。消費者目線でいえば、この商品が他の商品よりも優良な点は『プラズマクラスター』発生装置の搭載によって、部屋の空気をきれいにできる付加価値があることだという認識をするわけです。

今回は、その効果がないのに効果があるように宣伝した、ということで問題になりました。はっきりいえば、ウソまたはウソに準ずる広告だったということです。これがNGだというのは分かりやすい話です。

しかし、ここで立ち止まるのは片手落ちです、たとえ掃除機の広告に『プラズマクラスター』に関する宣伝が全くなくても、掃除機が『プラズマクラスター』発生装置を搭載していること自体がひとつのメッセージになっています。

そもそも、掃除機に『プラズマクラスター』発生装置を搭載しているからには、掃除機の通常の性能に加えて、付加価値になるような効果があるという期待をするのが普通でしょう。ちょっと調べれば、『プラズマクラスター』には部屋の空気をきれいにするような効果があることがわかります。考えを進めれば、掃除機に空気をきれいにする付加価値を付けた商品であるという理解になるはずです。

広告から空気清浄効果に関する記載をなくしたとしても「効果がないにも関わらず、効果があると誤認させる」という問題は存在し続けます。「優良誤認」の判定は受けなくなるでしょうが、非常に脱法的な状況のままにあります。僕は、企業倫理として問題のある状態だと考えます*2

参考:結局プラズマクラスターは効果があるの? ないの?! シャープに聞いてみた – ガジェット通信

*1:それほど調べていないので第三者機関を信用して伝聞調で表現しておきます

*2:これは、いわゆるマイナスイオン商品と同じ状況です。マイナスイオン商品については、マイナスイオンの明確な効果をうたう商品は少なくなっています。企業は「マイナスイオンを出す」ということだけを主張し、消費者が勝手に誤解するのを期待しているのです。