批判者に意識してもらいたい3つのこと

ぼくは元超常現象信奉者で、信奉者としての議論経験も少なくない。そんな経験から、信奉者と議論する場合に、批判者として気を付けたいポイントをあげてみる。相手が純真な信奉者の場合は特に気を付けてほしいところ*1

1. 信奉者をユニークな一人の人として扱う

あたりまえのようで、あたりまえにできている人は少ない。
信奉者の主張には、どっかで聞いたような話が多いのは事実。そして何度も見てきたような間違いをしていることも多い。でも、やっぱり詳細は色々と違うものだから「またあのパターンか」「周回遅れ」「FAQ」と思っても、目の前の信奉者の意見を注意深く聞き、目の前の信奉者の意見に反論して欲しいと思う。
信奉者の意見をFAQとして一般化されたものへカテゴライズして、FAQへの返信を書いてしまうのは問題だ。信奉者は「こいつ、全くぼくの話を聞かないでどこかの誰かの話をしてる。話にならん。」とか「結局自分語りしたいだけか。」と思う。

2. 信奉者の中では一貫した正しい意見であることを意識する

信奉者の意見には同意できないからこそ、批判者になっているはず。だから信奉者の意見に同意できないのは当然。でも「内部矛盾している」とか「合理的思考ができない」とか「徹底的に間違っている」という前提で議論を続けると、極端にすれ違うことになる場合が多い。
ひとは意外と合理的で、まがりなりにも合理的な筋道が立たないものを信じるのは難しい。間違った結論に達する過程には、事実誤認があったり、論理展開が間違っていたり、飛躍があったりするもんだけど、信奉者がどのような筋道で信じているのかが重要*2。多くの場合、信奉者と批判者の一番の違いというのは、暗黙の前提が全くことなることが原因なので、そこまで落とし込むことができたら第一段階成功と考えていいと思う。
前提の相違という視点を持たずに表面化した話題の議論に終始すると、信奉者からは「全く理解不能だ」とか「頭から否定するだけ」なんて見られる。

3. 批判者は自分の間違いや偏りに気付きにくい

超常現象批判者やニセ科学批判者は、おおよそ正しい結論をいう。だからこそ、自分の間違いには気付きにくく、指摘されにくいということには注意したい。科学的な思考、クリティカル・シンキングなんてしなくても、「キーワード」+「批判」なんかでGoogle検索をすれば、見た目いっぱしの批判者になることができる。そこまで酷くなくても、中途半端な理解で正しい結論を言うことができる。そこが落とし穴になる。
それから、様々な思考の「バイアス」も注意したいところ。思考のバイアスをもっているのは信奉者だけではない。批判者ももっている。信奉者が重大な問題を起こしていて、それが事前に予測可能に見えたとしても、「後知恵バイアス」かもしれない。信奉者が愚かにみえたとしても「基本的帰属錯誤」かもしれない。
批判者が陥りやすいバイアスについては、過去のエントリも参照のこと。『信奉者の問題を過大評価する可能性のある4つのバイアス - Skepticism is beautiful
ここら辺のことを理解していないと、信奉者の能力を不当に低いものと評価してしまう。信奉者は「バカにされている」とか「理想論ばかりだ」とか思う。

信奉者を説得するつもりのない人へ

ぼくは、批判対象になるような信奉者も、ゆるい信奉者も同じような間違いをしていたり、同じような環境にあると思う。だから、批判対象になるような信奉者に対する言葉は、ギャラリーとして議論を眺めるだけののゆるい信奉者にも同じように伝わると考えている。
そんなわけで、信奉者を説得するつもりのない批判者であっても、参考になる点はあるんじゃないでしょうか。

*1:対象にしているのは、ある程度の議論ができる信奉者となる。殆ど何の意見も持っていない「なんとなく信奉者」は対象外。

*2:ただ、ある程度の一貫性のなさは、あって当然なので気にしない。